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報告書「建築協定・連絡協議会の活動充実・体制強化に向けた検討及び試行(その2)」 2011.3
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2-33

 

横浜市建築協定連絡協議会

特定非営利活動法人 横浜プランナーズネットワーク

 

                                        

活動名称 

        

建築協定連絡協議会の活動充実・体制強化に向けた検討及び試行(その2)

活動地域

神奈川県横浜市

活動分野

       

 

 

    高齢化など住環境の変化がすすむ中、地区の住民で構成される建築協定地区の運営委員会が、  担い手を確保し建築の審査や指導などの活動を行う難しさが増している。横浜市建築協定連絡  協議会は、機関紙の発行、勉強会の開催等により地区支援の成果を上げているが、より一層の  充実が求められている。建築協定の運営のノウハウを共有するため、NPOと恊働して、協定地区  運営の工夫等を整理しノウハウ集を作成するとともに、地区間の交流・意見交換を行った。

 

 

 

1.活動の背景と目的  

 

  建築協定各地区の住民により構成される建築協定運営委員会では、建築協定の基準への適合審査や指導、建築協定区域隣接地への加入勧誘など多岐に渡る活動を行っている。しかし、これらの活動を専門知識の少ない地域住民が的確に行うことは難しく、様々な支援が求められている。 

 横浜市建築協定連絡協議会は、市内 174 地区の建築協定区域の土地所有者等を会員として設立された組織であり、各運営委員会の活動を支援するため、横浜市の支援を受けて建築協定に関する情報交換や普及啓発などを推進しているが、地域住民の高齢化、建築確認の民間開放など、建築協定の運営をとりまく環境は厳しさを増してきており、活動内容のより一層の充実が求められている。

  このため、平成 21 年度から活動基盤・体制の強化を含めた活動内容の充実に向けた検討・試行を、まちづくり NPO と連携して開始し、協定地区の運営に関する基礎的な情報の収集を行った。

今年度は、前年度の活動を踏まえ、建築協定地区の運営状況等の情報の活用・共有化をすすめるツールとなる運営ノウハウ集の作成、運営委員会の方面別・テーマ別交流会の開催活動の継続・充実について検討・試行を行なった。

 

 

2.活動内容

 

 2-1 活動の概要と手順

 

(1) 協定地区の運営状況等の情報の活用・共有化 -建築協定運営のノウハウ 48」の作成 

 建築協定連絡協議会と NPOがノウハウ集検討部会を設置し、前年度実施したヒアリング調査の結果や今年度実施した交流会の意見交換をもに、建築協定の運営状況に関する情報の整理分析を進めた。

  検討部会のメンバーは協議会から 15名、NPOから 7名が参加し、7回の検討部会を開催するとともに、メールや FAX.を活用して意見交換を行い、各協定地区の運営委員会のノウハウの選定や評価を行い、「建築協定運営のノウハウ 48」を作成した。

 

(2)交流会の開催

 

  建築協定連絡協議会と NPOが検討部会を設置しして、方面別、テーマ別の意見交換会を開催した。検討部会のメンバーは協議会から 10名、NPOから 6名が参加した。

 

  1) 南部方面交流会(平成 22918日)

 

  方面別に建築協定地区運営委員会の交流を促進するため、今年は新たに市南部の磯子、金沢の各区の運営委員会の交流会を開催し運営の状況や課題等について意見交換を実施した。対象 25 地区うち 5地区(11人)が参加した。参加者総数は 33人であった。

 

  2)工業系地域の意見交換会(平成 22112日)

 

  前年度に引き続き、工業系の建築協定地区の運営委員会の意見交換会を開催した。各地区の運営状況について意見交換の他、横浜市の地域まちづくり条例にもとづくルールを活用して、工業系地域の環境の維持に取組んでいる地区の参加を得て意見交換をすすめた。対象 11地区のうち 5 地区(5人)が参加した。参加者総数は 25人であった。

 

  3)西部方面交流会(平成 221212日)

 

  前年度に引き続き、西部方面の建築協定地区の意見交換会を開催した。検討を進めている協定地区のノウハウ集を紹介しながら意見交換を行なった。対象 22地区のうち 5地区(5人)が参加した。参加車窓数は 21人であった。

 

  4)自動更新地区の意見交換会(平成 23117日)

 

  横浜市の建築協定地区の内約半数が、廃止の決定をしない限り協定が継続される「自動更新」を協定の期間として定めている。地区の環境変化や社会環境の変化などへの対応など、建築協定の運営上共通した特徴を持っているため運営上の課題や対応策などについて意見交換行なった。

 

 

3)活動の継続・充実

 

  前年度に引き続き、建築協定地区の運営について、建築協定連絡協議会の小委員会や NPOと連携して運営ノウハウの作成や地区間の交流、テーマ別の意見交換等の活動を行なった。

  これらの活動を通じて、建築協定連絡協議会の運営支援を継続し充実するためのノウハウの体験的な修得を進めた。

 

 

活動の内容と手順 


2 活動内容(1)協定地区の運営状況等の情報の活用・共有化

 

(1)建築協定地区の現場にある運営ノウハウを収集し整理する

 

 横浜市建築協定連絡協議会は、建築協定の円滑な運を支援するため、「建築協定運営委員会の手びき」、「建築協定更新マニュアル」等を刊行している。

 しかし、ヒアリングや交流会等を実施した結果、各地区の建築協定運営委員会が行っている運営上の工夫や取組みの中には、他の地区の運営にも参考となり、活用されるべきノウハウが多くあることがわかった。

  これまでも、地区の優れた取組みは、建築協定連絡協議会が発行している「建築協定たより」や毎年開催されている勉強会などで紹介されてきているが、運営の現場にある取組みを体系的にまとめたものは無かった。

  このため、平成 21 年度、22 年度のヒアリングや交流会等によって得られた建築協定地区運営の取組みに関する生きたノウハウを整理し、「建築協定運営のノウハウ 48」として作成することにした。

 

  なお、併せて、これまで刊行された「建築協定たより」等から、各地区の取組み等を紹介した記事を整理する等、基礎的な情報の整理をすすめた。 

建築協定地区の運営のノウハウを収集・整理して作成した冊子(表紙)


 「建築協定運営のノウハウ 48」は、各運営委員会が建築協定の運営を積み重ねる中で培ってきたノウハウを共有し、各地区の運営委員会並びに連絡協議会の運営をより円滑するために作成した物であり、運営の教科書というより、地域の現場で役立ちそうな知恵、工夫を集めて分類し、コメントや説明を加え、新しく運営委員になられた方にも参考になるようにまとめたものである。

 また、必ずしも唯一の正解を提示するものではなく、各地区の特徴に合った課題等の解決のヒントを提供することをねらいとしたものである。

 「建築協定運営のノウハウ 48」は、市内の各運営委員会に配布する予定である。

 

(2)「建築協定運営のノウハウ 48」の構成

 「建築協定運営のノウハウ48」は以下のような内容で構成し、48のノウハウに簡

単な解説を付けた。また参考とした事例、アンケート調査の結果や、参考文献を併せて示した。

 

 


2 活動内容(2)交流会の開催

 

平成 21年度の検討の中で、各地区での建築協定の運営に関する課題が明らかになる中で、各地域の課題を再認識し、同様な課題を有する地域同士が相互に情報交換やノウハウ交換を通じて、それぞれの地区の運営を維持発展させていくとともに、新たな仕組みづくりなどについて協働して取り組むことが必要であることが確認された。 

そこで、こうした課題の再認識・共有、ノウハウの交換・共有化を図るために、テーマや地域ごとに情報交換や意見交換を行う交流会を開催することとなった。

21年度は、西部方面の交流会、工業系地域の意見交換会を行なった。

 

【方面別区分】  地域別の交流会を開催するために設定した地域区分とその建築協定地区数は以下の通りである。

・西部方面(保土ヶ谷区(7)、旭区(10)、泉区(3)、瀬谷区(2)    22地区

・南部方面 (磯子区(6)、金沢区(19)               25地区

・南西部方面(港南区(15)、戸塚区(12)、栄区(9)          36地区・中部方面 (鶴見区(3)、神奈川区(3)、西区(1)、中区(2)、南区(5)) 計 14地区

・北部方面1(港北区(12)、緑区(8)、都筑区(13))        33地区・北部方面2(青葉区(46))                    46地区  有効地区合計(176地区  工業系地区 11を含む) 

 

 

参考 21年度の交流会開催状況

 平成 21年度は以下の交流会、意見交換会を開催した。

1回西部方面別交流会 

・日 時:平成 22212日(金)19:0021:00

・場 所:旭区役所新館 会議室

・出席者:23

 

1回工業系意見交換会

・日 時:平成 22126日(火)15:0017:00

・場 所:横浜市庁舎6階 B会議室

・出席者:15

 

今年度は、南部地域の交流会を新たに行なうとともに、西部方面の交流会、工業系地域の意見交換会については、21年度に引き続き 2回目の交流会、意見交換会を開催した。

また、横浜市域の建築協定区域の約半数は、協定の期間が自動的に更新される可能性がある地区となっており、居住ニーズへの変化への対応が指摘されることが多いことから、これらの地区の運営状況について意見交換を行った。

 

 

 

1) 南部方面交流会(平成 22918日)

 横浜市の南部方面(磯子区、金沢区)には、合計25の建築協定地区がある。この内5地区が参加した。また、隣接する区から1地区が参加した。

南部方面交流会の実施概要

日 時:平成 22918日(土) 13時〜15

場 所:金沢区能見台地域ケアプラザ 多目的ホール出席者:

南部方面の建築協定地区:西武金沢文庫住宅(4 人)、関ヶ谷自治会区域内(1 人)、能見台二丁目(1 人)、ウッドパーク金沢文庫建築協定運営委員会(1 人)、庄戸第一地区(2 人。連絡協議会兼ねる)

隣接する区の協定地区:洋光台まちづくり協議会(1人)

横浜市建築協定連絡協議会(8人)

横浜プランナーズネットワーク(8人)

都市整備局(1人)、金沢区(1人)、磯子区(1人)

 

 3つのテーブルにわかれて以下のような内容の意見交換をした。

建築協定以前に、お隣り同士の関係について

・建築協定の審査終了をお知らせする際、お隣同士でのコミュニケーションを良くとり、建て替え内容の説明をしていただくよう、文書に書き添えている。

建築協定を超えた項目への対応について

・建築協定本体であまり細かくルール化すべきではない。基本的な考え方をしっかり述べておくことが大切で、運用の知恵が必要となる。

・建築協定本体は骨組みであり、運用はマニュアルを作って行っている。その際、マニュアルも含めて建築協定であると言っている。

・街づくり指針を作り対応している。

・建築協定以外の項目については団地協定で対応している。

・マナーの部分も多く含まれる。何でもルール化するのもどうか。

・自治会の役割となる項目も入ってくるので、建築協定運営委員会と自治会の連携バランスが大切である。

・地域としてまとまって行くことが前提であるが、区役所にも地域力推進担当など地域コミュニティに目を向ける部署などもできてきたので、行政による支援を仰ぐことも考えておきたい。

運営委員会の担い手不足について

・単純に輪番制にするのが良いか疑問がある。永年委員を務めている詳しい方がいるので助かっている。

・難しい役割ばかりが強調されるが、自分の町やそこに建つ建築と係わることに意義があり楽しいことも伝えていくべきだ。

町会との関係 メリット・デメリット

・自治会と協定委員の関係づくりまでが大変。作ってしまえば違和感ない。

・建築協定委員になって、自分が違反していることに気づいた。周知をもっと図らないと。

・将来は自治会内で意見が割れることにならないか。お金の問題で。自治会の弱体化にならないか。建築協定の独立はできないか。

・町会からの負担金を出してもらい、訴訟にそなえて積み立てている。

・自治会の半分が協定地区で残りがマンションであるため、自治会から資金や人を出す根拠がない。

地域まちづくり条例による支援の活用

・建築協定としての活動に対して補助金等はないのか。

・建築協定に限定せず、ひろくその地域のまちづくりとして考える必要もある。

・住んでいる人の気持ちにあわなければ協定の意味がない。

・建築協定からはずれていたエリアを地域のまちづくりとして取り込んでいくことがこれからのテーマである。

 

 

南部方面交流会のお知らせ 


2)工業系地域の意見交換会(平成 22112日)

 横浜市内には、工業団地や準工業地域で、操業環境の維持を目的とした建築協定地区が 11地区ある。

 これまで、工業系地区が集まり、協定の運営に関する意見を交換する機会は無かった。また、工業系地区の運営の実態もわからない点が多かった。

 このため、21 年度から工業系の建築協定地区の運営委員会を対象とした意見交換会を開催した。

 今回は前年度に引き続き開催したものであり 2回目の交流会となった。5地区が参加した。  今年度は、建築協定の運営地区に加えて、建築協定と併せて、「土地使用協定」、「まちづくり協定」を併せて活用している事例の報告や意見交換を行なった。

工業系地域の意見交換会の実施概要

日 時:平成22年11月2日(火)13:00~15:00場 所:横浜市庁舎6階 B会議室出席者:

工業系の運営委員会(5地区):港北ニュータウン・新吉田工場倉庫地区(1人)、新横浜テクノヒルズ企業団地(1人)、川向町工業地区(1人)、金沢産業連絡協議会(1人)、幸浦MD

C地区(人)

横浜市建築協定連絡協議会(5人)

横プラ(5人)

横浜市~地域まちづくり課(5人)、金沢区(1人)、都筑区(1人)、港北区(1人)、緑区(1 人)

 

 以下のような意見の交換をした。

・ペット葬祭場、産廃処分場等の立地をどう抑えるかが大きな課題。ルールを決めても、運用していくのが相当大変。こうした事業者等を検索できるデータベースづくりについても検討している。

・産廃事業所は実に面倒で、悪臭、騒音等の公害を出すことが多いので、工場・流通施設との共存もむずかしい。

・金沢産業団地には 630社、13の協同組合があるが、特に、食品関連業者にとっては隣接地への産廃事業所の立地を嫌がり、共存はむずかしい。

・従業員のための利便施設(コンビニ等の小売店舗)は、限定的だが許可、運用している。現在、

8店舗のコンビニが立地している。

・既存工場を増改築、転換する際にも、届け出をしてもらい、用途等の適合性をチェックしている。

・平成 193月に、地下鉄建設等で移転せざるを得ない企業 8社(現在は 7社)が研究会をつくり、様々な検討をすすめ、開発事業、建築協定等を実現してきた。

・新羽あたりの地権者や不動産業者が建設した貸工場が多く、その指導がむずかしくて大変。

・また、80 社のうち 45 社が組合員となっているだけで、それ以外の経営者等への指導がむずかしい。

・MDCでは、組合員以外に、準組合員(出資はしておらず、議決権はなし)という仕組みを作って、緩やかだが話ができる関係づくりを図るのも一方法ではないか。

・今年になって2件が廃業し、「仮眠室」をつくるという申請があった。将来寮にしないという書

面での約束(念書)をとりたかったが。


・工場経営に支障が出ないよう、書面で住宅・アパートにしない約束を取り付けるようにしている。

 

・住環境を守るのと違い、操業環境を守る方は「生活の糧」(所得)を得るための取組みであり、しんどく、むずかしい。 


・大きな団地では、きちんとしたルールを決めて、しっかりと運用しているところが多いみたいだが、小さな団地では、明確な基準を決めて淡々と運用しているところが多いようである。このようなところでは、競売の際、建築協定の話が重要事項説明されずに、協定無視で進んでしまうケースもありそうである。

 

・今回の担い手事業が終了しても、横浜市建築協定連絡協議会として、今回の工業系意見交換会のように、気軽に意見交換できる場を継続していきたいので、皆さんのご協力と積極的な参加をお願いしたい。 


3)西部方面交流会(平成 221212日)

 西部方面(保土ケ谷区、旭区、瀬谷区、泉区の 4区)には、現在、建築協定地区が 21地区ある。

 今回は、前年度に続き2回目である。

 

西部方面交流会(第 2回)実施概要日 時:平成22年12月12日(日) 13:30~16:00場 所:旭区区民活動センター「みなくる」出席者:

建築協定運営委員会(5地区):二俣川ニュータウン中央町内会西地区建築協定運営委員(旭区)、横浜興和台地区建築協定運営委員(旭区)、東戸塚グリーンタウン地区(保土ヶ谷区)、領家地区(泉区)、横浜西谷住宅地地区(保土ヶ谷区)

建築協定連絡協議会(11人)

横浜プランナーズネットワーク(4人)

都市整備局(1人)

交流会では2つのテーブルに分かれて意見交換を行った

1)相続問題をきっかけに「隣接地」が増えている

相続問題で協定が崩れことが多い

・昨年の2回目の更新では、2戸が相続問題で隣接地になってしまった。1件は相続に伴う分割協議でもめて隣接地になったが、長く住むお母さんからは相続問題のけりがついたら建築協定に入るという念書を書いてもらっている。もう1件は、相続で3人の共有名義となり貸家経営をするために隣接地化してしまった。

西谷住宅地や横浜興和台は比較的隣接地の歯抜けが少ない

・横浜西谷住宅地(保土ヶ谷区、82戸)は、横浜興和台(旭区、462戸)とエステ・アベニュー保土ヶ谷(保土ヶ谷区、133 戸)に挟まれたところにあるが、隣接地としての歯抜けはない。横浜興和台の隣接地も23戸と全体からすると少ない。

・建築協定があると良好な住宅地として資産価値を担保できるとの考え方の一方で、協定に入っていると売りにくいという不動産業者は多い。

 

2)二世帯住宅化等の建替えが進行している

二世帯住宅への建替えが増えている

・横浜興和台では、最近顕著なのは玄関等が独立した内部共用型の二世帯住宅の建替えである。

 

5件の建替えのうち3件が二世帯住宅となっている(多くが 70100坪の敷地)。

・二世帯住宅になると、家のボリュウム感は増しているので、法制度や建築協定には合致していても、おかしいのではないかと近隣から問い合わせが舞い込むことも多い。

敷地分割禁止を嫌がる所有者や業者も

・二俣川ニュータウン中央町内会西地区では、敷地分割はダメとなっており、分割そのものを禁止している。横浜興和台は 165㎡/区画以上であれば分割はできるといった違いがある。

・相続等で敷地を分割したいが分割できないのは困るという所有者も結構いる。

 

 

 


 

 

3)日常の付き合いがベースにあると協定を守りやすい

女性ならではのきめ細かな目線が大事(横浜興和台)

・横浜興和台の運営委員は女性中心で、新築等の業者に「この書類はよく分からないから、○○して!」と言える。男性は、分からないことがあっても、「分からない」とは言わない。

・土盛り等の小さな変化でも、興和台は運営委員がすぐ見つけたり、近隣から通報があり、すぐ井戸端会議が開かれる。不動産業者でも、地図を片手に地区内に来ようものなら、「何をしているの?」等の質問攻めにあったりして、どんな動きも見逃さないのが特徴である。防犯効果もある。

・日常の付き合いがあり、コミュニティができていることが協定を守るのに非常に大事なことである。

 

女性型と男性型では

 運営委員会の違いがある

・横浜興和台は、自治会と連動しており、自治会副会長が協定運営委員長になる仕組みとなっている。2人の副会長(男女1名ずつが多い)のうち、防犯とか防災は男性の副会長が担当することから、結果的に、建築協定は女性の副会長が担当することになる。

・西谷住宅地は、自治会=協定運営委員会なので、協定運営委員長は男性の自治会長が務めることになっている。

 

4)建物用途の問題については建築協定だけでは解決できない

建物用途についてはいろいろ問題が起きている

・規模の大きな敷地で保育園を建てたいとの事前相談が運営委員会にきた。福祉施設などと同等の性格のものと考え運営委員会としては認めたいが、隣接敷地の人が反対しており判断に困っ

ている。

・児童相談所をやっている人から子どもを受け入れる施設にしたいという相談があったが、協定に違反するのではないかとの懸念があった。結果として公益施設と判断し運営委員会では了承した。

・共益性のある施設は特例で建てられることになっているので、認めることにした。

・自宅でピアノ教室や塾を行うことも同様の問題がある。

・営利でなければよいという話もあった。

・グループホームはダメという例もあった。

・宅地を駐車場として利用することに対しては建築協定では扱えない。

運営委員会はどこまで対応すべきか? 

・地区の将来像にかかわる問題でもあり、全てを建築協定に委ねることは難しい。地域の町内会・自治会の判断もあるのではないか。

・建築協定書の解釈によって運用するしかない。

・町内会・自治会に判断を委ねるとしても、建築協定(運営委員会)による見解を示すことは必要ではないか。

建築協定をこえた地域のまちづくりのしくみが必要

・建築用途の問題は、建築協定を超えて地域のまちづくりの問題として取り組むしくみが必要である。

 

5)悪質な協定違反への対応

悪質なケースが出てきた

・建て替えの場合、図面上は協定に適合していても、元の「地盤面」がどこだったか現地では確認できない。そもそも建築協定に記された「宅地造成工事検査完了時における地盤面」というのがどの高さか明確でない。

・斜面地の場合、駐車場を作りその上に住宅を建築するケースがあり、実際は高い建物になってしまうが協定上は違反ではなく、周辺から苦情が出るなどのトラブルが起きている。

・図面に室名が入ってないものについては、受け付けないことにしている。

・図面と違う建物が建つことをそもそも想定していない。もしそうした例があるとお手上げである。

・「図面に反するような建築はしないこと」と明記しこれに印をもらうことにしている。怪しいケースでは実際に測ってしまうこともしている。

・「チェックシート」をうまく活用するとわかりやすい。

 

土地の分割の問題

・元々2宅地を使用していた大きい土地に隣接地を若干買い足し、分割線を変えて3軒建ててしまうケースが出てきた。

・そのときの建築の経緯や運営委員会の対処の仕方など運営委員交代のときにきちんと引き継いで行くことが大切である。

 

6)地域に関心を持ってもらうPRを

・町内会の会報等に建築協定の取り組みを記事にしてPRしている。

・地域の一般の人は建築協定への理解が薄い。7)町内会・自治会と協定との関係をどうつくるか

・町内会の中に環境部会がありこれが建築協定運営委員会となっているため、建築協定の活動や問題があった場合には町内会全体に図ることができるようになっている。

・町内会組織とだぶっていることで、地域の人材が共有されている。

・地域の中にいる建築家や専門家等を活用する。

 

8)全体意見交換で出た意見

・土地の転売が多くなってきており、協定から抜けて隣接地になっていくケースが増えている。それらの土地は分割され問題が生じている。

・建物用途についていろいろな問題が起きている。建築協定だけでは扱いきれない場合がある。地域でのまちづくりの方針が必要になっている。

・地域の一般の人は建築協定への理解が薄い。町内会の会報などを活用してもっと地域へ建築協定のPRをする必要がある。

 

西部方面交流会参加者の感想

感 想

・他の地区の状況が聞けて、参考になりました。

・建築基準法等の基本的な知識が必要だと感じました。

・このような勉強会を続けていただきたいと思います。

・年に一度の交流会に加え、何かあった時のお悩み相談ができる身近な仲間としての連絡先があると良さそう。

・今日一日で、仲間意識ができたようです。

・他の地区の話を聞くと、明日は我が身ですね。

・他の地区の方の事例を聞いて、いずれ起こるかも知れないと思い、参考になりました。

・顔をつきあわせての談義は、話が盛り上がり、話しやすかった。

・初めて西部交流会に出席しました。

・隣接している地区の方々のお話が聞けて良かったと思います。

・興和台での運営の特徴として、住民の

   ・コミュニケーションの良さ

   ・業者も含めて環境への関心が強い

   ・女性委員の勉強力が大

・二俣川ニュータウンで相続の時土地分割の問題

・西谷住宅地区で、古い看板を区の補助で作り替えられることになった。

・地域の問題を提案していただき、大変参考になりました。

・運営委員の対応の限度は今後の問題点とした。

・自治会と運営委員会の関係について解った。

・こぢんまりしていて話し合いがしやすかったです。

・色々な話が聞けて参考になりました。

・運営の工夫が聞けて良かったです。

・積み立てをしているかなど、突っ込んだ話も聞けました。

・初めての参加でしたが、もう少し参加者があるのかなとの期待に反し、少ないのは何故か考えさせられた。委員長の年齢のせいか、開催日(日曜日)のせいか、原因は色々あるだろう。

・開陳された意見、日常のご苦労、コミュニティの心構え、など、参考になった

・今後とも、このような地域別(ブロック別)の交換(歓)会を、適宜、開催していただけたらと思います。

・今日はとても参考になるお話がたくさん聞けて、とてもよかったです。

・楽しかったです。

・近い住宅地の方との交流は、とても良いことだと思いました。

・最近の業者は悪質化して来ているので、私たち建築協定委員も、法的な勉強会が必要て来ているのではないかと思っています。

・次回は参考になるような事例もあったらお願いしたいです。

 

4)自動更新地区の意見交換会(平成 23117日)

「有効期間」は決めなければならない(建築基準法第 70条)ものとされている。「有効期間」を 10 年とする例が一般的であるが、継続意思が確認されれば、1〜数回に限って期間を一定期間延長できるように定めた例もある。

 

* 70条 前条の規定による建築協定を締結しようとする土地の所有者等は、協定の目的となつている土地の区域(以下「建築協定区域」という。)、建築物に関する基準、協定の有効期間及び協定違反があつた場合の措置を定めた建築協定書を作成し、その代表者によつて、これを特定行政庁に提出し、その認可を受けなければならない。

 

建築協定の有効期間の決定例(10年間の例)

(有効期間)

23 条 この協定の有効期間は,横浜市長の認可公告のあった日から 10年間とする。

 

建築協定の有効期間の決定例(10年間で数回に限り延長を認める例)

(有効期間)

9条 この協定の有効期間は横浜市長の認可公告のあった日から10 年間とする。ただし、期間満了日の6ケ月前までに、協定区域内における土地所有者等の過半数を超える反対の申し出がない場合は、期間満了日の翌日から起算して更に5年間効力を有するものとする。

 また、違反者の措置については期間満了後もその効力を有するものとする。

2. 前項に定める反対の申し出は書面をもって第14条に定める委員長まで提出するものとする。

 

 一方、現行の建築協定には、協定期間を定めていないものや、有効期間が無限に延長できるものがある。現状では、このような(無限に延長ができるような)有効期間は認可されていない。

 

建築協定の有効期間の決定例(自動更新の例)

 (有効期間〉

12 条この協定の有効期間は、横浜市長の認可公告のあった白から1 0 年間とする。ただし、期間満了時までに土地の所有者等の過半数の継続反対の意思表示が無い場合は、更に5 年間延長されるものとし、以後この例による。

2 この協定の有効期間にした行為に対する第14条および第15条の適用については、従前の例による。

 

- 有効期間の無限延長について

 

 有効期間が無限に延長できる可能性がある建築協定の「有効期間」に決め方について、以下のようなタイプがある。 


 

自動更新地区の意見交換会実施概要

日 時:平成 23117日(月) 14451700 場 所:横浜市技能文化会館会議室出席者:

建築協定連絡協議会(11人)

横浜プランナーズネットワーク(6人)

都市整備局(3人)

 

 

 自動的に更新が行われる可能性がある地区(以下「自動更新地区」)について、運営状況の報告や地区の運営に関する簡単なアンケートの結果等を踏まえて、意見交換を行った。

 

 自動更新地区では、地権者等による廃止決議がなされるまでは協定期間が更新されたり、廃止決議がされるまで継続されるため、運営委員会の活動の沈滞や、居住ニーズへの対応の困難さが懸念された。

 しかし、事例報告や意見交換の結果、運営のノウハウ集でも紹介されたように、建築基準法の改正や協定地区の居住ニーズの変化に対して、独自に細則や運営規準を定めるなど、様々な運営の工夫が行われていることがわかった。

 地区運営の活発さについても、本事業に参加した建築協定連絡協議会のメンバーの多くが自動更新地区の運営委員であることからも、運営に対する関心が高いことが推察される。

 一方で、協定の廃止されることを懸念して地権者のニーズ把握を躊躇するような意見(交流会での意見)があることも事実であり、地権者等の意向を踏まえた対応方法や、建築協定以外のまちづくりルールの活用(運営ノウハウ集でも紹介)等、引き続き検討すべき課題があると考えられる。

 

 

2 活動内容(3)活動の継続・充実

 

 運営状況等の情報の活用・共有化や交流会の開催等の活動を通じて、建築協定連絡協議会の活動の継続や充実を図ることが、本事業のねらいである。

 NPO との共同作業等を通じて、協定地区の規模や協定の内容、運営の方法等について多様な地区があることを知り、様々な工夫が独自に行われていることが理解された。この成果は「建築協定運営のノウハウ 48」となった。このほか、建築協定地区の概要やアンケート調査結果の追加集計など基礎的な情報の更新も行った。

 また、全年度に引き続き、方面別の交流会や工業系地区の意見交換会等も開催し、今年度が 2 回目となる交流会も実施し地区間の交流を定例化する試みも行った。ノウハウ集の作成に関連してヒアリングのフォローアップも行った。

 

 

 

3.活動効果

 

(1)活動効果

 建築協定連絡協議会で、本事業の紹介も適宜行なわれており、21 年度に比べて、本活動に参加したメンバーが倍増した。

 また、建築協定地区の運営ノウハウの分析と地区間の交流会を並行して実施しており、運営ノ

ウハウの分析や検討と地域間交流の進め方などのノウハウが蓄積されつつある。

 

(2)団体内・外の評価

 「協定地区運営のノウハウ 48」は、運営の現場から得られたこれまでにないノウハウ集となった。多くの地区のノウハウを参考にしており、編集段階でも参加メンバーが活発に意見交換を行なった。

 今回のノウハウ集の発行をきっかけに地区間で更に活発な意見交換がすすめられ、ノウハウ集として更新が重ねられていくことが期待される。

 

 方面別交流会については、以下のような意見(西部方面交流会)があり、今後も継続を希望する声があった。

1)        このような方面別の交流会は意義があると思うので、今後も話し合いの機会を持っていきたい。

2)        今回のような方面別で自主的に開催するのはむずかしい。連絡協議会が音頭をとって開催してほしい。

3)        地区が隣に位置しているが互いに交流がない。互いに近所である方が似たような問題について話しやすいのではないか。

4)        今日参加された地区の間で、互いに連絡が取れるようにできるとよいのではないか。そのために、今日の参加者名簿に差し支えなければ連絡先を記入し共有できるとよい。

 

 

4.今後の課題

 

 検討部会への参加メンバーが拡大したが、今後も活動を継続し、連絡協議会のメンバーへの報

告や情報提供を行なうことにより、地区運営の支援が一層充実することが望まれる。

 

 建築協定の運営に関連して、担い手の確保に象徴されるように分かりやすい運営ノウハウの普及の課題がある。

 この点については、今年度作成した「建築協定運営のノウハウ 48」が、運営のツールとして活用されることが期待され、今後、更新・充実していくことが期待される。

 また、方面別の交流会も、地区運営に役立つものとして評価され、継続を望む声もあることから、定例化することが望まれる。

 

 一方、建築協定地区の居住ニーズの変化や多様化に関連した課題がある。

 建築協定を地権者の意向等に応えながらいかにして建築協定地区地区を運営していくかという基本的な課題があるが、土地の利用や管理、新しい設備や居住形態への対応、高齢者の増加に対応した身近なサービスの実現など、建築協定だけでは対応し切れないような課題も生まれてきている。

 この点については、建築協定の運営で対応する方法や、他のまちづくりルールを併用・活用する方法等について引き続き検討すべき課題である。

 

 

5.今後の展開

 

 建築協定地区の運営を支援する、建築協定連絡協議会の活動を充実し強化する試みでは、2 年間の活動により、運営に関する基礎的な情報の整理、運営に関するノウハウ集の作成、方面別の交流会の開催等を行った。

 活動は横浜市建築協定連各協議会と NPO法人横浜プランナーズネットワークが協働して行い、双方が活動のメリットを共有することができた。

 今後も、引き続き、必要に応じて、活動を継続、発展させて行く。